1. ルール・グローバル・ダイレクトが決めること
mihomo 系クライアントでいうプロキシモードは、ざっくり言えば「コアがトラフィックをプロキシ経由にするか、そうでないか、その判定をどのルール集合に任せるか」を切り替えるスイッチです。用語はアプリごとに「Rule / Global / Direct」や日本語訳が混在しますが、中身は次の三類型に整理できます。
ルール(Rule)は、有効なプロファイル内の rules: に従ってドメインや IP、GeoIP などを評価し、ヒットした行で指定されたポリシー(策略・Proxy 名・DIRECT など)へ振り分けます。購読提供者が用意したルールが「国内は直結・海外はノード」といったバランスを担うため、普段使いの既定として最も選ばれやすいモードです。ただし MATCH 以降のフォールバックがすべてプロキシ側になっていると、見た目はルールでも実質ほぼ全件が迂回に近づきます。ルールは「YAML の設計どおりに落ちる」モードだと覚えると、トラブル時の切り分けが速くなります。
グローバル(Global)は、設定とバージョンにより細部はありますが、一般的に選ばれている既定のアウトバウンド(多くは GLOBAL グループ)へトラフィックを集めるイメージです。ルール評価を素早くバイパスしたいとき、ノードやプロバイダの生き死にだけを試したいとき、一時的に「全部その経路で出す」検証に向きます。反面、国内向けサービスまで遠回りになるため、速度や決済ページの挙動で違和感が出やすい点は留意します。
ダイレクト(Direct)は、プロキシチェーンを介さずローカルのデフォルトルートに任せるモードです。一時的に Clash 側のルールを通したくない、社内 VPN と競合を避けたい、または「まずは素の回線で DNS だけ切り分ける」といった場面で便利です。誤解されがちなのは、ダイレクトでもOS のシステムプロキシが別アプリにより上書きされていたり、TUN が別経路を握っているときは、画面のモードと体感がずれることです。次章以降で、その重ね合わせを扱います。
| モード | ふるまいの要約 | 向きやすい用途 |
|---|---|---|
| ルール | YAML の rules に従いポリシーへ振り分け | 日々のブラウジング、分流付き購読の既定 |
| グローバル | 既定アウトバウンドへ集約しやすい(ルールを大きく迂回) | 接続試験、ノード切替の素早い確認 |
| ダイレクト | プロキシチェーンを使わず直結寄りに | 社内ネット、切り分け、セキュリティ要件 |
ルールの前提知識を深めたい場合は、当サイトの ルールルーティング解説とあわせて読むと、モード表示とログの不一致を自己診断しやすくなります。
2. Mihomo Party での切替手順(共通の心がけ)
Mihomo Party では、メインウィンドウのモードセレクタ、タスクトレイ(Windows)やメニューバー(macOS)のコンテキストメニュー、場合によってはキーボードショートカットや外部コントローラから同一設定へ到達できます。ビルドごとにアイコン位置は変わるため、「必ずこの画面の左から三つ目」といった記述は避け、Rule / Global / Direct の英字表示か、それに対応する日本語ラベルを目印にすると長く使えます。
実務的な順番は次のとおりです。(1)対象プロファイルがアクティブで mihomo コアが稼働していることをステータスとログで確認する。(2)モードをクリックまたはメニューから選ぶ。(3)数秒待って 接続一覧やログに新しいフローが現れるかを見る。コアが停止したまま UI だけ先行していると、トグルの見た目と実効がずれるため、まずコアの生死から見ます。
ノードやプロバイダ(策略グループ)の選択はモードとは別軸です。ルールモードのまま GLOBAL 系グループのノードを変えたり、ルール上の auto グループを更新したりする操作と、いま説明している三モードの切替は併用されます。初心者が混乱しやすいのは「ノードは点灯しているのにモードが Direct」といったクロス設定なので、トラブル時は両方を一覧に書き出すと原因が見えやすくなります。
3. Windows と macOS での差と確認ポイント
Windows 10/11では、システムプロキシをオンにした際の実体は WinINet/WinHTTP の世界観に近く、設定アプリの「プロキシ」ページと Mihomo Party の表示が食い違うと、モードを切替えてもブラウザだけ挙動が変などの現象が出ます。特に企業管理下ではグループポリシーやセキュリティ製品がプロキシ PAC を注入している例があるため、初回セットアップは Windows 11 向け Mihomo Party 初回設定や Windows 10 向けとあわせて読み、UAC や Wintun の確認まで含めた方が安全です。
macOSでは、システム設定の「ネットワーク」や「詳細」内のプロキシ欄と GUI の連動、さらにネットワーク拡張まわりの許可が重なります。Mihomo Party 専用の macOS 初回稿が別途あるとは限らないため、同じ mihomo クライアントでも手順の型が近いmacOS の Clash Verge Rev 初回稿の「権限とプロキシの確認順」を読み替えると迷いが減ります。Apple Silicon と Intel でドライバや拡張の文言が微妙に違う点も、切替の体感には影響しませんが、トラブルシュート時の検索語には効きます。
どちらの OS でも共通するのは、モード変更後にブラウザの長寿命接続(HTTP/3/QUIC)が古い経路を握ったままになることがある、という点です。疑わしいときは対象タブを閉じて開き直す、ブラウザ側で QUIC を一時オフにする、といった接続の作り直しが安価な対処になります。動画配信やリアルタイム通信を弄る記事群とも整合する考え方です。
4. TUN・システムプロキシとモードの関係
よくある誤解は、「TUN をオンにしたらグローバルモードみたいになる」というものです。正しくは、TUN はパケットをコアの処理パイプへ引き込むための仕組みであり、そこに乗ったあとでルール/グローバル/ダイレクトのどれで出口を決めるかが適用されます。したがって TUN をオンにした直後も、モードがルールであればルール評価は生きています。
システムプロキシは、プロキシ設定を読むアプリケーションに対してローカルの mixed-port 等へ向ける短期ハックに近い効き方をします。TUN がオフでシステムプロキシだけオンなら、ブラウザや多くのデスクトップアプリはルールモードの恩恵を受けやすい一方、環境変数を無視する CLI や独自スタックのゲームは取りこぼします。そこで TUN を足すと「モードはそのまま、アプリ覆盖率だけ広げる」イメージになります。TUN の一般的な説明は TUN モード解説を参照してください。
運用上のおすすめ順は、まずルールモードでシステムプロキシだけをオンにし、不足が見えたら TUN を重ねるです。いきなりモードをグローバルにして TUN もオンだと、「遅い・決済が通らない・社内サイトが開かない」などの原因が複数重なり、ログだけでは切り分けに時間がかかります。ダイレクトに切り替えたつもりが TUN が生きてルールを再評価している、といったようにモードとトラップの組み合わせを二重に読む癖をつけると、開発者向けの利用でもストレスが減ります。
5. 日常利用と開発シナリオのレシピ
日常のブラウジング+動画+ SNSなら、基本はルールモードのまま、システムプロキシをオン。取りこぼしたアプリ(配信ソフトやゲームランチャー)が現れたら TUN を追加、がもっとも順当です。ルール YAML の国内ドメインが十分なら、グローバルへの切替は短命に留めると回線も精神的にも安定します。
開発者が npm/git/Docker を触る場合は、グローバルモードに頼るより、必要なホストだけルール側で明示した辞書型の購読に寄せた方が長期的に安全です。どうしても一時検証なら、ターミナルセッションだけ HTTP_PROXY と HTTPS_PROXY を立て、GUI はルールのまま、という住み分けも有効です。環境変数の残骸が原因で「ダイレクトなのに proxy へ向かう」こともあるため、シェル設定ファイルを棚卸ししてください。
社内イントラや銀行ページで証明書エラーが出るときは、いきなりグローバルにせず、まずダイレクトで素回線確認→ルール側のドメイン例外を確認、の二段に分けると対処が速いです。DNS が fake-ip の構成なら、ホスト名と表示証明書の組がずれて見えることもあるため、fake-ip と redir-host の比較稿もセットで読んでおくとよいです。
クライアント同士の画面差を俯瞰したい場合は Clash GUI 比較稿が補助線になります。Mihomo Party を軸にしつつ、Verge Rev を併用する読者も、モード名とメニュー階層の対応表を自分用に一度書き出すと運用が楽になります。
6. 切替えたのに挙動が変わらないとき
まずコア再起動とプロファイルの再アクティブ化で表示のゼイレンを潰します。次に、OS のプロキシページを開き、手動プロキシや PAC の行が Mihomo Party 以外に向いていないか確認します。三番目に、別の VPN やフィルタ製品が類似の仮想 NIC を占有していないかを見ます。ここまでで改善しない場合は、ログのレベルを上げ、実際にヒットしたルール行と選択されたポリシーをメモします。
Windows で Store アプリだけ例外になるときは、UWP のループバック制限が絡むことがあります。必要に応じて Clash TUN・UWP ループバックの記事を参照してください。
それでも腑に落ちないときは、グローバル→ルール→ダイレクトをワンセットで切り替え、各段階で同じターゲット URL を開き、接続ログに現れるアウトバウンド名を比較します。この「三相ログ」はチーム内でインシデントを共有するときも説明しやすく、再現手順の記述コストを下げられます。
8. よくある質問
構成やプロバイダーにより答えは変わります。一般的な論点に絞ります。
- ルールモードなのに一部サイトだけ全体プロキシに見えるのはなぜですか。
- 最終フォールバックや DNS まわりのマッチ、あるいはブラウザ拡張が別経路を握っている可能性があります。ログのホスト名とルール行を突き合わせてください。
- ダイレクトにしてもブラウザが海外経由に見えることがありますか。
- 別クライアントの VPN、ブラウザ内プロキシ、固定 DoH など Clash 外の要素を疑います。システムプロキシと TUN を含めてオフ/オンを整理します。
- TUN をオンにするとモード切替の効き方が変わりますか。
- モードの意味は変わりません。変わるのは「どれだけ多くのトラフィックがコアのモード判定に乗るか」です。
- macOS でも Windows と同じ名前でモードを切り替えられますか。
- コアの概念は共通で、GUI ラベルだけ異なることがあります。英字の Rule/Global/Direct を目印にしてください。
9. まとめ
Mihomo Party で迷わないコツは、モード(ルール/グローバル/ダイレクト)と配管(システムプロキシ・TUN)を別レイヤーとして扱うことです。購読とコアが健康なら、日常はルール+システムプロキシから始め、取りこぼしが見えたら TUN を重ね、検証だけグローバルへ一時移動する、というリズムがもっとも事故が少ないです。ログにルール行とアウトバウンド名を残す習慣がつけば、開発時の切替もチーム共有が速くなります。
GUI クライアントによっては、アイコンは似ていてもモード変更の導線が深く、状態表示と実際のコアがズレやすいものがあります。更新が細かく、入手経路が説明と揃っているクライアントであれば、初日からモードとログの対応を確認しやすく、本稿のような「使い方」の記事に書いてある操作がそのまま画面に落ちます。逆に、ビルドごとにメニューが移動し、エラーメッセージがログに出づらい実装だと、同じ mihomo コアでも運用ストレスが積み上がりがちです。他製品で同样的な苛立ちを経験した方ほど、説明の一貫性と配布の透明性が長期利用の快適さに直結する、と実感しているはずです。環境に合うパッケージを → 無料で Clash をダウンロードし、快適な接続体験を試すから選び、モードと TUN の切替を自分の PC で一度通してみてください。
関連記事 · 同じテーマ
トピックの近さで選んだ関連記事 — 同じカテゴリの Clash 実践ガイド。
Homebrew が止まる?brew と GHCR・Bottle CDN を Clash 分流で安定:macOS 実測(2026)
macOSでbrewがCDN/ghcr.ioで固まるとき、formula・GHCRをClash分流で揃え開発向けに安定。
続きを読むClash Meta(mihomo)の external-controller と Secret:Web コンソール(Yacd-meta)と REST をローカル/LAN で安全に開く順序と注意(2026)
管理面の 9090 前後とプロキシ用 mixed-port を分離。mihomo の external-controller/secret/バインドを揃え、Bearer と curl で確認。allow-lan 共有稿はプロキシ口の話で別問題。信頼できない LAN では開かないチェックリスト付き。
続きを読むWindows で Git と GitHub CLI(gh)を Clash/mihomo に通す:HTTPS クローンと Git Credential Manager を揃える手順(2026)
本機で Clash 稼働中の前提下、git と gh を HTTP_PROXY 系で本機 mixed-port に揃え、GCM と api.github.com を分流・DNS と一致させる。mihomo ルールでの github/codeload/raw、ログと証明書の切り分け。npm 環境変数稿・MCP 稿と互補、…
続きを読む